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2025.3.10

公益法人と「特別の利益供与の禁止」

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益認定法」)は、公益認定の基準の1つとして「その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。」(公益認定法第5条3号)、「その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。」(公益認定法第5条第4号)という定めを置いています。この定めは一般に「特別の利益供与の禁止」と呼ばれ、公益財団法人または公益社団法人(以下、総称して「公益法人」)から構成員や他者への利益の移転について一定の制限を設けているものです。
本稿では、「特別の利益」とは何か、「特別の利益供与」に該当するとはどのような場合を指すのかについて解説、検討します。

1 「特別の利益供与」の判断基準概説
 公益認定法における特別の利益について公益認定当ガイドライン(以下「ガイドライン」)では、以下のような説明がなされています。
 「『特別の利益』とは、利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、事業の内容や実施方法等具体的事情に即し、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇がこれに当たり、申請時には、提出書類等から判断する。」
 この説明からわかるように、公益法人から利益の移転があった際に、それが「特別の利益」に該当するか否かは当該利益の移転について個別具体的に検討することになります。このとき、ガイドラインの同記載によれば「利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模」、「事業の内容や実施方法等具体的事情」を考慮されることになります。

2 「特別の利益」とはなにか
 まず「特別の利益」における「利益」には、金銭、物品といった明らかに財産的価値のあるものものに限られず、人的資源や取引における優遇等の一見して直ちに財産的価値を有するとはいえないものも含まれると考えられます。
 公益法人informationによると「公益法人の財産は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的として、公益目的事業に使用されるべきものであり、公益法人から他の団体等に社会通念上不相当な利益が移転し、受入先において財産を営利事業や特定の者のために使用されることは適当ではありません。また、公益法人が寄附により受け入れた財産を社員、理事等の法人の関係者や営利事業を営む者等の特定の者の利益のために利用されることが認められると、公益法人に対する信頼が損なわれ、国民からの寄附の停滞を招くおそれもあります。」とされており、「利益」を「財産」に限定していません。これはガイドラインにおける上記の記載も同様です。また、「国民の信頼の維持」も同規制の趣旨だとすると、財産の移転以外にも法人の信頼を低下させるような利益の移転は防止する必要がありますので、「利益」を「財産」に限定していないものと思われます。
 
 次に「特別」とはどのようなものを指すのでしょうか。
 前掲ガイドラインの定義によると「利益の供与その他の優遇」が「社会通念に照らして合理性を欠く不相当な」ものであることを指す、と定義することができます。また、同ガイドラインが「利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、」と記載していることから、「特別」と言えるか否かの判断においては金額の大小といった利益の規模が相当かという観点だけではなく、「誰に対して利益を与えるか」という相手方の選定が相当かという観点からも判断されるものと言えます。
もっとも、「社会通念に照らして合理性を欠く」という基準は抽象的で、明確に何が該当するのかの判断は最終的には監督官庁の判断に委ねられることになります。この点について、国税庁が法人税に関する通達で、「特別の利益を与えること」について次のような類型を例に挙げています。
(1) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。
 (2) 法人が、特定の個人又は団体に対し、無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。
 (3) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。
 (4) 法人が、特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。
 (5) 法人が、特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。
(6) 法人が、特定の個人に対し、過大な給与等を支給していること。
(「法人税基本通達1-1-8 非営利型法人における特別の利益の意義」より引用。下線は筆者)

 このような類型を見てみると、表現の差はあれど、基本的には「通常の取引に比べて法人が損をする」ような取引がこれに該当するとされています。そうすると、「特別の利益」における「特別」とは「通常に比べて法人が損をする」といえるような取引かどうか、がこの1つの基準であると言うことができるように思います。

3 「特別の利益供与」に該当するかの判断基準
 上記の通り、特別の利益供与に該当するかは、「通常に比べて法人が損をする」といえるか、という観点を検討の出発点として検討することになります。取引であれば当該地域・分野の取引相場と比べて当該取引の金額が高いのかどうか、給与や役員報酬等であれば同規模の他の法人や株式会社と比べてその金額が妥当であるのか、といった観点から検討します。
 もっとも、最終的にその利益が「特別」に該当するかどうかは「社会通念に照らして合理性を欠く不相当なもの」に該当するかに基づくため、「通常に比べて法人が損をする」と言える場合には、その次のステップとして「通常の場合と当該利益供与との差について、社会通念上合理的なといえるか」という観点から検討することになります。
 例えばある取引先に対して業務委託を行うとした場合、他の業者に比べてその取引先への業務委託費が高額であったとしても、その取引自体に法人の事業の広告効果があり、他の業者の委託費との差を補って余りあるほどの集客効果が見込める、といった場合には他の業者との差額は社会通念上合理的なものということができるので、この取引は特別の利益供与に該当しない、と考えることができる可能性があります。

4 さいごに
 本稿では特別の利益供与についてみてきましたが、一義的に明確な判断基準がない以上は安易に特別の利益供与の該当性の有無を判断することは危険です。実務的にはまずもって「通常に比べて法人が損をする」かどうかを基準に、これに該当する場合には専門家や所轄庁に判断を仰ぐことが無難なものと思われます。

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